エネルギー化学
身近な材料で『エネルギー』を創り出そう!
小久保 尚先生 横浜国立大学

『マンガでわかる電池』
藤瀧和弘・佐藤祐一(オーム社)
一次電池、二次電池、燃料電池、そして太陽電池など各種電池のしくみについてわかりやすく解説しており、高校生でも理解できる内容となっている。大部分がマンガであるため、電池について学習する高校生にとって、取り掛かりとしては最適な一冊。
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第1回 様々な発電 ~電気エネルギーをつくる仕組み
小久保 尚先生 横浜国立大学 理工学部 化学・生命系学科

機械、熱、電気、光、化学(物質)、原子力といったエネルギーは相互に変化し合います。例えば、電気エネルギーはヒーターによって熱エネルギーに変えられたり、電灯によって光に変えられたりします。逆に、光エネルギーは太陽電池によって電気エネルギーに変えられます。

今、世の中では電気エネルギーが注目を浴びています。そこで、どうやって発電するか(電気エネルギーをつくっていくか)を考えてみましょう。
例えば水力発電。これは、水の力を使ってダイレクトに発電するものではなく、水を高いところから落とすことによってタービンという歯車をぐるぐる回し、電磁誘導によって発電します。火力発電の場合は、石油や石炭を燃やすことによって熱に変えます。そして、この熱がいきなり電気エネルギーに変わるのではなく、熱で水を温めることで蒸気を発生させ、その蒸気のエネルギーで歯車(タービン)を回して電気エネルギーにします。この仕組みは、原子力発電も同じで、まず熱を作り、その熱で歯車を回して電気エネルギーに変えます。
ところで、今の世の中では、安定した電力を供給するということは第一命題です。学校で停電があったくらいでは大した被害はありませんが、病院や工場で停電が起こると一大事ですから。
そして、常に安定した電力を私たちに供給するためには、原子力発電や火力発電が適しています。けれども、原子力発電は、いわゆる「核のゴミ」を出したり、完全に制御しきれないなどの問題があり、火力発電もCO2を排出するので、環境に優しくありません。
一方、水力、太陽光、潮力、風力、地熱など、地球に優しい発電もいろいろとあります。けれども現在の技術では、こういった自然エネルギーだけでは世の中が回らない。今までと同じような生活をするだけの電気エネルギーを、得ることができないのです。

このような自然エネルギーを利用する発電がうまくいけばいいのですが、今のところ、地球に優しい発電は力不足です。実は今日、市販の太陽電池で酸素と水素を作り出し、これらを使った燃料電池でプロペラを回す実験を行う予定でしたが、天気が悪くて太陽電池パネルが役に立ちません…。

(2014年6月6日 神奈川県立柏陽高校「サイエンスワークショップ」での講演より)
興味がわいたら
各種電池のしくみについてわかりやすく解説した入門書

『マンガでわかる電池』
藤瀧和弘・佐藤祐一(オーム社)
一次電池、二次電池、燃料電池、そして太陽電池など各種電池のしくみについてわかりやすく解説しており、高校生でも理解できる内容となっている。大部分がマンガであるため、電池について学習する高校生にとって、取り掛かりとしては最適な一冊。
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未来の光=エレクトロルミネッセンス(EL)の入門書として

『トコトンやさしい有機ELの本』
森竜雄(日刊工業新聞社)
著者はエネルギー変換有機デバイスの研究をする愛知工業大学教授。電気刺激を光に変える未来の光=エレクトロルミネッセンス(有機EL)は、「発色が美しい」「薄くて軽量」「低消費電力」という優れた特徴を持つ理想のデバイス。この本は有機ELの発光原理や作成法などをイラスト図解でわかりやすく紹介。
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燃料電池の仕組みの入門書として

『「燃料電池」のキホン』
本間琢也・上松宏吉(ソフトバンククリエイティブ)
燃料電池とは、水の電気分解と逆の反応で、水素と酸素の持つ高い化学エネルギーを吐き出す反応によって電気を起こす。この本は、燃料電池の原理、二次電池(蓄電池)との違い、携帯電話の電源、今話題の燃料電池カーへの期待から来るべき水素エネルギー社会の意義まで語られる。
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未来の光=光るプラスチックの発明の発想、化学の魅力が書かれた

『私の歩んだ道 ノーベル化学賞の発想』
白川英樹(朝日選書)
2000年度のノーベル化学賞を受賞した白川英樹博士は、聴衆に向かって「私の歩んだ道」の何からしゃべろうかとためらった時、子供の時読んだ「不思議の国のアリス」の一節が思い浮かんだという。うさぎの執事が王様に「どこから始めましょうか」と言うと、王様は「はじめから始めなさい」「ずっと話を続けなさい。そして終わりが来たら、そこで終わりなさい」と答えた。「私もこれにならってはじめからはじめようと思います」と白川先生は言う。この本は、プラスチックに電気を流すことができることを発見、21世紀の光る高分子の扉を開いた白川先生のユーモアと少年時代の思い出、化学に興味を持つようになったきっかけが書かれている。
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鈴木カップリングが解説 ノーベル化学賞受賞者の生い立ち本―理系を志す人へ

『世界を変えた化学反応 鈴木章とノーベル賞』
鈴木章 監修(北海道新聞社)
2010年、ノーベル化学賞を受賞した鈴木博士がいなければ、21世紀の暮らしは、まったく違っていたかもしれない。受賞理由になったのは、ホウ素を用いて有機化合物を合成し光る高分子「鈴木カップリング」の開発。医薬品から液晶などデジタル先端技術まで幅広い分野に画期的な進歩をもたらした。この本では博士の生い立ち、人生、鈴木カップリングの説明がカラーの図付きで書かれた章も。広く理系を志す若い人に読んでもらいたい一冊。
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再生エネルギー利用の広がりを描く(エネルギー相互変換の仕組みを学んだ後の応用編として)

『ご当地電力はじめました!』
高橋真樹 (岩波ジュニア新書)
福島の会津電力では、会津のエネルギー自給を進めてから10年以内に福島県全体へと広げていく構想を掲げている。地域の電力を自分たちで作ろうという市民主導の取り組みをレポート。他に「おひさまの町」飯田市、上田市の屋根借りソーラー、岐阜県いとしろの小水力、東京多摩市で活動する多摩電力、北海道から広がる市民風車。ご当地電力というネーミングがいい。
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原子-分子-有機物質のイメージが明確

『ニュートン別冊 すぐわかる!ビジュアル化学 改訂新版』
(ニュートンプレス)
物質を構成する原子、分子、結晶、高分子について美しいイラストで解説されている。高校レベルから大学基礎レベルの化学について平易な文で記述されている。本書の後半には日本人ノーベル化学賞受賞者の受賞時のインタビューや簡単な受賞内容についても掲載。
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小久保尚先生プロフィール

1974年生まれ、神奈川県立柏陽高等学校出身。東京理科大学、東京工業大学で学び、研究者として横浜国立大学へ。専門は高分子化学。2009年には高分子研究奨励賞(高分子学会)