環境・バイオの最前線

発酵学・有用微生物学

醤油会社の庭の菌が世界の糖尿病患者を救う

 

今や微生物による有用物質生産は、医薬品生産を中心に巨大産業を形成している。中でも一番初めに遺伝子組み換えで生まれた、体内の血糖量を下げ糖尿病治療に不可欠なインスリンは、世界で2300億円市場になっている。

 

しかしそのシェアは、アメリカのイーライリリーとデンマークのノボノルディスクファーマの2社が独占し、日本企業の立ち入るすきはなかった。両社のインスリンの作り方は、リリー社は大腸菌に遺伝子を導入し(図1)、ノボ社はもともとはブタのすい臓から抽出していたが、コストを下げるため酵母に遺伝子導入する方法で展開していた。

図1 大腸菌によるヒトインスリンの生産
図1 大腸菌によるヒトインスリンの生産

そんな中、伊藤ハムは、食肉で余ったブタのすい臓の有効利用として、そこからインスリンを取り出し製品化できないかと模索していた。しかしなかなか思うようにいかず、微生物による生産方法を開発することになり、名古屋大名誉教授の鵜高重三先生に相談した。当時、鵜高先生はヒゲタ醤油と組んで世界中の土を探した末、たまたまヒゲタ醤油の工場があった銚子の土から見つけた枯草菌で、羊の毛が抜ける薬を作ることに成功していた。そこで伊藤ハムは、その枯草菌にインスリンを作らせようと試みた。そして1999年、ついにインスリン開発に成功した。大腸菌は生産量が多いものの生産物を菌の中に貯め込みがちだ。一方酵母は、生産量が低い。枯草菌はその両者の欠点を克服している。もし実用化が進み、実際に販売できるようになれば、インスリン産業は大きく変わるかもしれない。

 

発酵学・有用微生物学

発酵学・有用微生物学ってどんな学問?

 

◆もっと知りたい!学問講座

不思議な微生物の代謝システムを知ろう!

 
◆トピックス1
醤油会社の庭の菌が世界の糖尿病患者を救う
◆トピックス2
◆トピックス3
 
◆学問ことば解説
 

発酵学・有用微生物学の研究者

発酵学・有用微生物学が学べる大学