コンピュータグラフィックス
オリジナルぬいぐるみの二次元型紙ができる ~コンピュータで手芸を支援
五十嵐悠紀先生
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科

オリジナルのぬいぐるみやビーズを作るのは、なかなか難しい。立体のぬいぐるみの形状を想像しながら、対応する2次元の型紙を作らなければいけない。また、それを使って3次元の立体を完成させるという作業もなかなか大変だ。五十嵐先生は、ぬいぐるみやビーズなど手芸設計を子どもでもできるように、コンピュータで支援します。
私は手芸をテーマに研究しています。オリジナルのぬいぐるみを作ろうと思うと、なんとなく立体の形状は想像できても、そこから二次元の型紙を作るのが大変です。そこでコンピュータグラフィックス(CG)を使って子どもでもできるように支援する研究をしています。
まずは、ぬいぐるみ作りを支援するシステム「Plushie(プラッシー)」です。画面でぬいぐるみの立体形状をマウスで線を描いてデザインすると、システムが自動的に二次元の型紙を生成し、シミュレーションでぬいぐるみ形状を計算します。この二次元の型紙を使って、あとは縫うだけ。同じ方法で人より大きなバルーンも作れます。
次は、ビーズ作品の支援システムです。1本のテグスにビーズを通していき作るものですが、これを設計するのも難しい作業です。ビーズデザインシステム「Beady(ビーディー)」では、すべて同じ形のビーズを使うと仮定し、「辺」の上にビーズを対応させることで、すべての辺の長さが等しいモデルをデザインする問題に帰着させて、設計を支援しています。ユーザがジェスチャーインタフェースでデザインしていくことで、ビーズモデルを作成していきます。さらに、三次元のCGを生かして、ワンステップずつ表示することで、子どもや初心者も簡単にビーズの作品が作れるよう、制作過程も支援できます。
自分だけのオリジナルステンシルを作るシステム「Holly(ホーリー)」を紹介します。ステンシルは、型紙に色をのせるだけで簡単に作品ができるのですが、型紙を自分で作ろうと思うと、1枚につながった制約で切り抜いていかなくてはならないので、大変です。このシステムでは、ユーザは好きな絵を描いていくだけでシステムが必ずつながったデザインにしてくれます。
私の研究は一見、どれも趣味のような研究テーマですが、「物理的な制約の下でデザインをする」というテーマに取り組んでいます。手芸を、理学や工学の観点から見るのもとても面白いんですよ。
興味がわいたら
Computer Graphics Gems 2015
山本醍田、鈴木健太郎、小口 貴弘、德吉雄介、白鳥貴亮、向井智彦、五十嵐悠紀、岡部誠ほか
(株式会社ボーンデジタル)
国内の若手CG研究者が各章を担当し、最新の技術について解説。初学者をターゲットに執筆しているので、初めて読む人にもわかりやすい本となっており、おすすめです。
『ドラえもん』
様々な未来道具が出てきて、それが実は実現できているものや、実現に近いものなどでてきていて楽しめると思います。3DCG映画の『STAND BY ME ドラえもん』もどんなCG技術が使われているかに注目しながら見てみるとまた違った視点で楽しめると思います。
AI世代のデジタル教育 6歳までにきたえておきたい能力55
五十嵐悠紀(河出書房新社)
子どもへの創造的教育の一環として、低年齢児へデジタルデバイスを導入する事例も増えています。親向けの本ですが、ワークショップを行う立場として気を付けるべき視点なども参考になるので幼児教育やデジタル教材を用いた子ども向けワークショップが気になる人におすすめです。