商法学

なんでお母さんが株式会社の会議に出るの? ~会社組織の法

三浦治先生 中央大学 法学部

第3回 会社は株主のために? ~会社法の主役は株主

法学では、株式会社というのは、あるビジネス(たとえば家具の製造・販売)に出資をしようという人たちが集まって株式会社をつくり、取締役を選任して日常の経営をやってもらうけれども、大事なことは株主総会で自分たちが決めるよ、損が出たらしかたがないけどもうけが出たらその分け前にあずかる、というしくみと捉えています。大村家具の株式を市場で買ったのだとしても、やはり株主ですから、会社をつくっている人の一員とされるわけです(あるいは、会社を構成している人、といった方がしっくりくるかもしれません)。

 

そのようなしくみにおいては、会社の社長も、株主総会で選ばれてその会社の経営をまかされている取締役(会社と委任契約を結んだ者)の1人にすぎません。また、会社経営の一環として、サラリーマンを雇っていろいろな指示をしてしごとをしてもらうということも含まれています。サラリーマンは、会社と雇用契約を結んだ者にすぎません。

 

そういうわけで、株主は「会社の実質的所有者」といわれたりします。

 

株式会社もまたひとりの人

 

私たちの人間関係は、法学の眼鏡をかけてみてみると、すべて権利と義務の関係になります。

 

そして、法学では、生身の人間のほかにも、法律関係を簡単に考える目的で、生身の人間の集まり(団体)もまた権利・義務の主体として認めることがあります。法が「人」として認めているという意味で、「法人」といいます。そして、株式会社は「法人」の1つなのです。

 

ただ、法人というのは実態があるわけではありませんから、誰かが法人の決定をしなければなりません。株主総会が株式会社のもっとも大事なことがらを決めると書きました。ビジネス上の日常的な決定を株主総会ではできませんから(1年に1回しか決定しませんから)、そういう決定は取締役にまかされます。

 

株主は「実質的」所有者

 

会社は、法律上、ひとりの人ですから、誰かの所有物になることはできません。しかし、株主が会社の構成員であり、そのもっとも重要なことがらを決める権限をもち、もうけが出たらその分け前を得られるが、損したら何も得られないという立場にある(ビジネスのリスクを負っている)ということから、所有者ではないが「実質的には」所有者のような立場にある者として、実質的所有者といわれるのです。究極的には、株式会社は株主(実質的所有者)のために経営されるべきだということになります。

 

つづく

 

『高校生からの法学入門』執筆者・三浦先生よりメッセージ

◆三浦先生執筆

「第7章 なんでお母さんが株式会社の会議に出るの?

本書の第7章では、株式会社の組織に対する私法による規制(会社法)を題材にしました。そして、私たちのまわりにはこれだけ多くの株式会社があるのに、たとえば「株式って何?」という疑問をもっている人が多いのではないかと思い、株式会社のしくみのうちもっとも根本的なところ、つまり「株主って誰?」をテーマにしました。

 

まず、伝統的な私法の目からみると株主が会社の実質的所有者と捉えられることを、示しています。株主が株主総会で経営者を選ぶことなどを通じて、会社を支配するのが株主であること、そのしくみがわかります。しかし株主もいろいろですから(100万人も株主がいると、様々な人がいるはずです)、株主たちが絶対的な支配者であっても困ります。株式会社は、それ自体、法人として社会において活動し、多くの人たちに影響を与える存在であるからです。社会全体で、会社の活動をチェックしていくしくみも必要です。社会が変われば、チェックのしかたも変わっていかざるをえません(たとえば、メインバンクの影響力の変化、「ある種の多数株主」(これは機関投資家を意味しています)への期待)。

 

株主を会社の実質的所有者と捉えつつ、株式会社の活動が、適法に、また社会全体にとっても望ましい方向で行われるようなしくみを整えていくことが大事です。そのような中で、株主を会社の実質的所有者と捉えるというもっとも根本的なところにも見直しが必要になってくるかもしれないとも書きました(それは、上記の「伝統的な私法の目」というものに修正を加えていくことでもあります)。

 

法は社会とともにありますし、他の学問領域とも関連します。法を勉強するということは、よりよい社会をつくっていくために、ひとりよがりの考えに陥ることなく社会に対する見方を育んでいくための、一つの重要な方法だということでしょう。

 

※尚、本記事は、先生の執筆記事からの一部紹介です。

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