いよいよ始まる参院選 18歳のキミはどうする!?

ネット投票に、ドローンも登場。どんな制度なら投票率が上がるか、 みんなで自由に・楽しく考えてみた

~政治学の大学院生による未来の科目「公共」の授業

参院選が、いよいよ始まろうとしています。今年18歳になった高校生たちは、どう臨みますか。「若者の投票率低下問題」。「51%→33%問題」とも言われるように、選挙の投票率は若い人を中心に低い水準が続いています。

 

ではどうすれば投票率が上がるのか。国の方では、「現代社会」に変わって「公共」という必修教科を作って、政治に高校生も参加することの大切さを学べるようにするんだそうです。つまり、投票率の低下ってそこまで大きな問題ってこと?

 

そこで、みんなが投票に行くようになる選挙制度は何かないのか、高校生が自由に考えるワークショップが企画されました。企画したのは、大学院で選挙のあり方を研究する学生とその指導をされている先生。日本の研究者を代表する機関である日本学術会議の会報でも紹介された企画であるのだそう。今年7月には参院選もあるので、わたくし20歳の大学生ですが、体験してきました。(レポーター:慶應義塾大学経済学部3年 山田安希子)

 

ある日、突然選挙権、でも急にもらってもわかんない!

選挙や投票は中学や高校にもありましたよね。生徒会長など、やりたい人が立候補して、みんなで投票して決めました。候補者が自分の目指すプランなどをみんなに発表したうえで投票が行われる選挙です。けれども、いざ自分に選挙権が与えられ、国会議員などを選ぶとき、「投票って絶対に行かないといけないものなのかな、ちょっと面倒くさい…」。そんな思いがどこかにありました。

 

 

「衆議院の定員は480名」「参議院は3年ごとに半数改選」といったような政治の制度は学校の授業で教わり、テストに出るからと頭に叩き込みました。でも「なぜ投票へ行くことが大事なのか?」について学ぶ機会なんて、なかったんだなと今思います。

 

そして、18歳選挙権が成立し、突然選挙権を与えられても、当時高2の私は大学受験が目の前に迫った状態で、選挙や民主主義の意義なんて考える暇もありません。先生だって「英語やりなさい、ほら数学の成績どうなってるの?」ばっかりだったような。そんな状態で選挙権を突然与えられてもネ、でした。

 

高校の授業で、日本は第二次世界大戦が終わって民主主義の道を歩んだということを学びます。民主主義が当たり前に存在すると錯覚してしまいがちです。ほかの国での独裁政権のニュースなんか見ていても、「日本に生まれてよかった」だけしか思えない。これって、平和ボケ? 民主主義を機能させ、より良い世の中になるためには、主権者である私たちが意思表示などの行動をすることが必要では?

 

「投票率の低下はつまり民主主義の死を表している」そうです。大学に入ってから投票の意義などを多少考えるようにはなりました。しかし、やっぱり高校の時に真剣に民主主義だとか、投票だとかを考える機会があった方が良かったんじゃないか、そう思いました。何のイメージもつかないまま急に選挙権だけを与えられたってわからないですし。それで若者の投票率があーだこーだ言われてもどうしようもありません。

 

低くなりがちな若者の投票率、どう上げる?

~政治参加への意識をどう育むか

そんな時、自分が通っている大学にある大学院システムデザイン・マネジメント研究科で、投票する意欲を上げる選挙制度を10代が提案するという、実験的なワークショップが行われることを知りました。企画書を見ると、選挙権が与えられたばかりの18歳の投票率は高い水準だけれど、19歳、20歳となっていくにつれて投票率はだんだん下がってしまっているそうです。18歳選挙権が実現した平成28年の初の参院選の18歳投票率は51%だったのに、平成29年の衆院選での19歳投票率は33%だったそうで、「51%→33%問題」とも言われているらしい。それを阻止するには、高校生の段階で政治参加に対する意識付けが必要だということ。そのために政治学を研究している研究者たちも、動き出したということ。そして選挙や投票の重要性を考える機会として工夫されたワークショップを行うことで、どう高校生が変わるかを見てみよう、ということになったそうです。そして、慶應義塾大学の大学院生と、政治学会で理事も務められている谷口尚子先生が行うことになったそうです。

 

いざワークショップへ!〜アイデア出し大会の楽しさが政治への関心を高めてくれるってこと

学ぼう、選挙権獲得の歴史

~選挙権獲得、良いことに見えるけれど、実は裏に潜むものが…

まず始めは谷口先生によるレクチャー。当初は『25歳以上の男子で直接税15円以上を納める者』のみに与えられていた選挙権が、20歳以上の男女に与えられている現在のようになるまでの歴史を振り返りました。選挙権獲得の歴史は高校の歴史の授業で習いましたが、投票権が多くの人に与えられるにつれて投票率が下がっていることは知らず、とてもビックリでした。

 

下がる衆院選の投票率 ~1942年は80%以上、90年も70%以上、小選挙区制で下がった?
下がる衆院選の投票率 ~1942年は80%以上、90年も70%以上、小選挙区制で下がった?

ほかに現在の政治の問題点なども学びました。例えば今は若い人の投票率が下がっていてお年寄りの方の投票率の方が高い傾向にあるから、各候補者は票獲得のためお年寄りにとって嬉しい政策を掲げがちになってしまっている…など。

 

そういえば、イギリスがEUから離脱することになってしまったのも、若い人の投票率の低さが一因であるとも言われています。

 

20代の投票率は、60代半分以下。これで民主主義? ~イギリスのEU離脱も若者の投票率の低さが原因とも言われるが・・・
20代の投票率は、60代半分以下。これで民主主義? ~イギリスのEU離脱も若者の投票率の低さが原因とも言われるが・・・

また、印象的だったのは、権利と義務の関係でした。民主主義は古代アテネで生まれましたが、初めに選挙権を与えられたのは奴隷以外の成人男性だったそうです。彼らは戦争が起こると兵士として国家に身を捧げなくてはいけませんでした。その代わりに選挙権が与えられ、自分の身を捧げるこの国家に関する決め事に参加していたということ。

 

なるほど、先に今、18歳に選挙に参加するという権利が与え、後で義務も発生させるってこと? それが、成人年齢の引き下げにつながったり、きっちり税金や年金を払うように言われたりするっていうことなんですね。

 

先ずは谷口先生からレクチャー。ピンクのスーツの方が谷口先生です。
先ずは谷口先生からレクチャー。ピンクのスーツの方が谷口先生です。

10代で作ろう、理想の選挙制度

~絶対に嫌だ!異臭を放つ投票所

政治制度、選挙の成り立ちについてイメージができた後、ブレイン・ストーミングと呼ばれる手法に基づき、投票率を上げる新しい選挙制度について考える時間が始まりました。大学院生のレクチャーによると、「脳(ブレイン)で問題に殺到する(ストーミング)」ことを略して「ブレスト」と呼び、「他人の意見の批判はしない」「ユニークな意見を重視する」「質より量を重視する」「アイデアは結合し発展させていく」という4原則があるそう、そして特定のテーマに対し、集団で自由にアイデアを出し合う方法だそうです。そうすることで1人では考えつかない新しいアイデアを創造することができ、問題の解決に結びつく討議が行えるようになるそう。二つの班に分かれて、院生も交えながら早速始めました。

 

 

まず初めにみんなで考えたのが「最低の選挙制度」。「絶対投票しに行きたくない!」と思ってしまう制度を考えました。「とにかく自由に!なんでも書いてください」と谷口先生が言ったので、みんなで自由に書き始めました。「投票所が臭い」「お金持ちだけ何度も投票できる」「投票所までがSASUKE」…こんな選挙制度、絶対に嫌ですね。(だんだん本来の趣旨からズレて、ネタ披露大会と化していましたが…。) こんな感じで、考え付いたものをどんどん付箋に記入して模造紙に貼張っていきました。初めはなかなか思い付かなかったりしましたが、だんだん色々思い浮かぶようになってきて、なんと言っても何でも書いていいんだから、それはそれは自由に書かせていただきました(笑)。

 

とにかく自由に。思いついたらすぐ付箋に書いて貼ろう!
とにかく自由に。思いついたらすぐ付箋に書いて貼ろう!

 

続いて考えたのは「最高の選挙制度」。みんな、かなりポンポンとアイデアが浮かんでとても楽しそうでした。「投票したら成績評価がオールA」。最高ですね。そんな選挙だったら私だってそれはもう喜んで投票しに行きますよ…!

 

谷口先生は「投票したらお母さんが若返るという案、いいですね」と、嬉しそうに評していました。女性の投票率爆上がり間違いなし。最低の選挙制度、最高の選挙制度、それぞれのアイデアが一通り出たころには、模造紙は付箋で埋め尽くされました。

 

最後に考えたのは「使える選挙制度」。みんなで自由に書いたものをテーマごとに分け、さらに「最低の選挙制度」と「最高の選挙制度」から選んで組み合わせ、現実的に採り入れられそうな制度を考えました。

 

「『投票したらオールA』はちょっと厳しいかな…(笑)」

「やっぱりインターネットとかで手軽に出来たらいいよね」

「『係が投票用紙を家まで取りに来る(投票するまで係が帰らない)』仕組みは嫌だけど、便利でもあるよね。山間部の高齢者とか、投票所に行くのが大変な人には、ドローンで投票用紙を取りに来てくれる仕組みとか良いかも」

こんな感じでワークショップは終了しました。

 

 

高校生にとっての政治の学び方とは?

~お菓子食べながら、わちゃわちゃ考えることから

このようなワークショップをたくさんやることで、若い人の投票率が劇的にアップ!となるかといえば、なかなか難しいと思いましたが、高校生のうちにこうやって政治について少しでも考える、堅苦しいものではなく、みんなでお菓子を食べながら、自由におしゃべりしながら考える、初めはこういうものでいいのではと思いました。

 

ワークショップが終わった後、参加した高校生のアンケートには、「参加して楽しかった」という感想が多くありました。講義が楽しかったというよりも、その後の「選挙制度をみんなで自由にディスカッションしたのが楽しかった」と答えていた方が多かったです。やっぱり最初は自由な形でとりあえず選挙、投票というものに親しみを持ってもらえるようにする、という感じにするのが良いんだろうな。

 

結局、投票率が上がるにはどーすれば…?

~やっぱりYouTuberとジャニーズにはご登場を

参加した高校生いわく、学校で友達と政治の話をすることはほとんどないそうで、こうやって機会がないと政治のことなんて考えないよねと改めて思いました。

 

ただ、先生や保護者が見ている中で、「社会や地域の課題を考えてください」と言われたら、優等生的な話し合いやアイデア提起になってしまうでしょう。そんな中、参加者が心から楽しめるような「遊びの要素」を取り入れようとしているのは、とても面白いと思いました。

 

実は、この「最低」と「最高」を考えるブレストは、システムデザイン・マネジメント研究科で開発された「二極ブレスト」という方法だそうです。そして谷口先生が、参加した私たちが合間合間で答えたアンケートのデータを分析してくださいましたので、その結果を紹介します。

 

結果を見ると、参加した生徒の「面白いと思った」「政治への関心が高まった」「選挙へ行く意欲が高まった」という思いについては、先生による座学の講義の後よりも、みんなで話し合ったブレストの後の方が、より高くなっていました。「政治に関する知識が増えた」という思いは、座学の講義の後の方が強いようですが。政治や選挙に関心を持ってもらう上では、こうした楽しい仕掛け、みんなで話すプロセスなどが、効果があるのかもしれませんね。色々な主権者教育の効果を測定することは、政治学の教育や研究にとっても大事なことなんだそうです。

 

註:「面白いと思った」「政治に関する知識が増えた」「政治への関心が高まった」「選挙へ行く意欲が高まった」という4 つの項目について、「まったくあてはまらない=1」から「かなりあてはまる=7」までの7 ポイント尺度で回答してもらった。座学の講義後と二極ブレイン・ストーミング後の参加者の回答のポイントを「対応のあるサンプルのt 検定」にかけた。有意確率 5%未満1%以上に「*」、1%未満0.1%以上に「**」を付している。

 

2019年7月には参議院選挙が行われます(衆議院選も同時に行われる可能性があるとも言われていますが)。若い人の投票率はどうすれば上がるのか、ワークショップが終わった後に考えてみました。

 

インターネットでの投票がやっぱり一番楽そう。投票が楽なものになれば、みんな投票するかな。けれど、テレビで知ったのですが、あまりに楽な投票方式だと、有権者も考えずにいい加減に投票してしまう可能性もあるらしいです。ん~、難しい…。

 

こうやって考えると、投票のしやすさも大切だけど、投票に行くモチベーションのようなものを上げることも大事かなと思いました。それぞれの党の主張やどういうことを実現させる予定なのかを漫画とかイラストとかで、わかりやすく説明してくれたものをインターネットで流すとか、どうですかね。人気YouTuberに宣伝してもらうとか、アイドルが「みんなで選挙に行こう」って言ったらファンは反応すると思うし…。インターネットでの投票が難しかったとしても、インターネットを活用した方法というのは今後ますます必要になってくるだろうと思います。

 

最後に、わたくし、山田安希子の紹介をちょこっと

生まれは世田谷、育ちは横浜。高校時代は政治のことなんか考えずにひたすらのんびりダラダラと過ごしていたなあと思います。学校行って、部活やって、週末は友達と遊んで…と普通のJKでした。大学に入ってからはバイトにサークルに授業に、となんだかんだ毎日忙しく(笑)。時間がたくさんある分、色々やりたいことができるのは貴重だなと常々実感しています。最近は所属している塾生新聞会というサークルの活動に没頭しています!新聞の発行費を稼ぐために広告局長として営業しています!(でも営業って難しい!と思う日々。) 将来は高層ビルの上層階に住めるような人間になりたいな、とか漠然に考えていますが…(迫る就活)

 

自分で選挙制度を考えたり、ディスカッションしたり。事前学習は必要 ~参加した中央大学杉並高校の高校生たちの声

■現在世界的に民主主義が弱まっていると言われますが、どう思われますか。

右から2人目が菅野希帆さん
右から2人目が菅野希帆さん

民主主義とは「全員一致」の意見であるため、1人でも反対派の人がいたら、それは民主主義ではないと思います。(菅野希帆さん 高1)

 

みんなと一緒であることが美しいことであり、物事を平和に解決しようとするあまりに、自分の考えなど自分の個性を殺し、他の人の意見に同調したり、自分の意見を聞き入れてもらえないとあきらめている人が多いために、多くの考えが出回らず、1つの意見となってしまう。(内田好実さん 高2)

 

 

■異なる意見を聞かない、自分の気に入った人とばかりで集まる傾向にあると、最近の若い人に対して、よく言われますが、あなたはどう思われますか。 

いちばん左が寺内優香さん
いちばん左が寺内優香さん

インターネットの普及により、意見が合う人と関わる機会が増えたと思います。そのために、異なる意見の人とわざわざ関わらなくても友達や話せる人がいるというのが原因だと思います。(寺内優香さん 高1)

 

普段の生活の中で意見や趣味が異なる人と接することは、あまり楽しいことではないので、自然に自分の気に入った人と集まるのではないだろうか。しかし、これはなにも若い人だけではないと感じる。(細川陽平くん 高2)

  

自分も実際そうだと思うが、よくなかったことだと思う。自分の意見が他人にまったく理解してもらえないのをみんな恐れているから、自身のお気に入りとばかり集まっている。(内田好実さん 高2)

 

「異なる意見を聞かない」「自分の気に入った人とばかりで集まる傾向にある」のは、若い人だけではないと思います。それなのに、最近の若者はそのような傾向にあると言われるのは、とても心外なことだと思うと共に不愉快に感じます。

(内田里菜さん 高2)

 

■多様な考えに触れ、聞き入れるような社会の仕組みはどのようにあるのが望ましいでしょうか。

 

学校などで自分の意見を発表する機会がふえるようにディベートを増やすと良いと思う。(細川陽平くん 高2)

 

いろんな年齢層のそして多様な種類の地位の人々の考えを大切にしてほしいと思う。特に、社会的な立場の弱い障害者の方々の意見は、手話などを通して、必ず形にする必要があると考える。(内田好実さん 高2)

 

誰もが平等に参加できるようにする。(内田里菜さん 高2)

  

谷口先生(左から3人目)や大学院生たちと。右から4人目が細川陽平くん、3人目が内田里菜さん、2人目が内田好実さん
谷口先生(左から3人目)や大学院生たちと。右から4人目が細川陽平くん、3人目が内田里菜さん、2人目が内田好実さん

 

 

■今回のシチズンシップ教育のワークショップについてどう思われましたか。

 

選挙について学校で学んだときは、なんだかかた苦しく感じたことがあったけれども、みんなに平等に与えられた権利ということを改めて知り、自分の一票の重さに気づかされた。(細川陽平くん 高2)

 

18歳なんてまだまだ先と思っていましたが、もうすぐであることに驚きを持っています。私も18歳になったら、投票に行きたいです。(寺内優香さん 高1)

 

選挙に行くには事前学習も少しは必要だと思います。私にとっては今の政治家の方々の政策は難しく、他の政治家の方々との相違点もよくわかりません。そのため、相違点を明確に表してくれる公式サイトなどがあれば、もっと選挙に行くのを苦に感じないのではないかと思いました。(菅野希帆さん 高1)

 

中学校から選挙についての学びはあったものの、それは投票の体験であったりして、一時的に選挙に対しての興味はわくが、受け身の学習だった。だからこそ、これからは、自分が主体となって、積極的に選挙の仕方について考えたり、ディベート、ディスカッションをするなどの能動的に学習したりすることが必要だと感じるようになった。とてもささいな発見だが、このことに早く気づいて良かったと思う。(内田好実さん 高2)

 

最高の「主権者教育」の体験を!

10 代が考える!新しい Political System

シチズンシップ教育ワークショップが開催されます。

●日時:2019 年8月23日(金)・24日(土)

●会場:慶應義塾大学日吉キャンパス

詳しくはこちらから